仕事をしていると、夜のつき合いというのは避けられません。
得意先の接待もあれば、同僚同士の飲み会も日常茶飯事です。
結婚している僕は、家で妻と子供が待っています。
それでも、断ることができないものです。
もちろん、すべてが仕事というわけではありません。
僕自身、たまには思いっきり羽を伸ばしたいという気持ちが湧くこともあります。
仕事だと妻にはいいつつ、実際には、学生時代の友達とただ飲んだくれているだけということもあります。
妻にしてみれば、子供の世話に明け暮れる毎日で、夜に出掛けることなんてありません。
丸1日、まだコミュニケーションもろくにとれない子供と、自宅にこもりきりということもあるようです。
誰にも会わず、お酒を飲む機会などまったくなく。
そんな中、ヘベレケになって帰ってくる僕は、正直うっとうしい存在だと思います。
グチグチ嫌味を言われることもあれば、お小遣いを減らすよと脅されることもあります。
せっかく酔いが回っていい気分で帰宅したのに、なんて嫌なやつなんだと、不快に感じることもあります。
ケンカして、数日お互いに口をきかないなんてこともしょっちゅうです。
ただ、酔っぱらって帰宅した翌朝の僕は、大抵二日酔いになります。
気持ち悪くて、どうしようもない。
でも、会社には行かねばならない。
そういうときに、妻は必ず温かい味噌汁を用意してくれています。
ケンカして口をきいていないのに、みそ汁だけは必ずテーブルに準備されているのです。
それを口にした瞬間、僕の中で、罪悪感とか、後ろめたさとか、そういったものが一気に押し寄せてくきます。
食欲なんてないのに、味噌汁を一口飲むと、すっかり酒にやられた体に、ジワジワとしみていく。
それに、昨晩帰宅後、脱いでくしゃくしゃのままにしておいたワイシャツや脱ぎ捨てたソックスも、朝になるとどこにも見当たりません。
妻は相変わらず二日酔いの僕に話しかけることはなく、子供の世話をもくもくとしています。
そういう姿を横目で見ながら味噌汁を飲んでいると、結婚というのはなかなかいいものだなとしみじみ感じます。
飲み会を減らして帰宅しようかなという考えがよぎることもあります。
ただ、素直に感謝の言葉がでない。
これも、夫婦ならではの甘えなのかもしれません。
何をやっても許される、見逃してくれる、そんな気持ちがあるのでしょう。
朝の味噌汁にすっと「ありがとう」がいえる人間に、僕はいつかなるのでしょうか。